業務改善助成金の獲得を検討する場合は、特例事業者になりうる否か見極めることがとても重要なポイントです。以下の取りまとめました。
1. 業務改善助成金の概要
業務改善助成金は、厚生労働省が所管する助成金制度で、中小企業・小規模事業者が生産性を向上させ、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図る取組を支援するものです。
1.1 主な支給要件
- 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げること
- 生産性向上のための設備投資等を行うこと
1.2 助成内容
- 助成対象:生産性向上のための設備投資等の費用
- 助成率:3/4(一部の事業者は4/5)
- 助成上限額:最大600万円(引上げ額と引上げ労働者数に応じて決定)
1.3 対象となる事業主
原則として、以下の要件を満たす事業主が対象となります。
- 中小企業事業主または小規模事業者
- 事業場内最低賃金が申請時点で地域別最低賃金を上回っていること
2. 特例事業者について
業務改善助成金制度では、一部の事業者に対して特例が設けられています。これらの特例事業者は、より有利な条件で助成金を受けることができます。
2.1 特例事業者の種類と特例のポイント
A. 事業場内最低賃金900円未満の事業場
- 特例のポイント:
- 助成率が4/5に引き上げ
- 生産性要件が不要
B. 新型コロナウイルス感染症の影響により売上高が減少している事業者
- 特例のポイント:
- 助成率が4/5に引き上げ
- 生産性要件が不要
- 要件:新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高が30%以上減少していること
C. 物価高騰等の影響を受けている事業者
- 特例のポイント:
- 助成率が4/5に引き上げ
- 生産性要件が不要
- 要件:物価高騰等の影響により、売上高が減少もしくは売上原価等が上昇していること
D. 遠隔地において事業を実施する事業者
- 特例のポイント:
- これまでの支給上限額に上乗せした補助(最大200万円)
- 要件:遠隔地(離島、過疎地域等)において事業を実施していること
E. 特定の仕事や作業内容(特定就労形態)に従事する者を使用する事業者
- 特例のポイント:
- 助成上限額の引き上げ(最大600万円→720万円)
- 対象となる特定就労形態の例:
- 生産工程従事者
- 農林漁業従事者
- 給仕従事者
- 建設・採掘従事者 など
2.2 特例事業者の申請における注意点
- 特例の適用を受けるためには、それぞれの要件を満たしていることを証明する書類の提出が必要です。
- 複数の特例に該当する場合、最も有利な条件を選択することができます。
- 特例の適用状況は、経済状況等により変更される可能性があるため、申請前に最新の情報を確認することが重要です。
3. 申請手続きの流れ
- 交付申請:事業実施計画を作成し、管轄の労働局に提出
- 交付決定:労働局による審査と交付決定通知の発行
- 事業の実施:交付決定後、計画に沿って事業を実施
- 支給申請:事業完了後、成果報告と共に支給申請書を提出
- 助成金支給:労働局による確認後、助成金の支給
4. 業務改善助成金の活用による期待効果
- 最低賃金の引上げによる従業員の待遇改善
- 生産性向上による企業競争力の強化
- 設備投資等による業務効率化
- 人材確保・定着の促進
- 地域経済の活性化
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上と賃金引上げを同時に支援する重要な制度です。特に特例事業者に対する支援は、経済環境の変化や地理的条件等によって影響を受けやすい事業者に対して、きめ細かな支援を提供するものとなっています。
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